僕は子供の頃、歯医者が嫌いだった

小鹿

僕は子供の頃、歯医者が嫌いだった。

僕が幼い頃、母は僕を近くに住んでいた祖母に預けて、お稽古事等に明け暮れていたようで、小学校に上がるまではほぼ祖母に育てられたようなもんでした。

祖父が商売をやっていた関係上、祖父母宅は常に頂き物の菓子で溢れており、僕はそれを好きな時に好きなように・・・というか、四六時中食べていたような按配で、当然の結果として、僕の歯はボロボロでした。
夜中に歯が痛くて泣いた事も一度や二度じゃ済みません。
そして、半世紀ほど前の歯医者ってのは、歯を抜く時以外は麻酔なんてしませんでしたから、これまた当然の結果として、僕は歯医者が大嫌いでした。

その大嫌いな歯医者が痛い事をする為に口の中に手を入れて来るもんですから、抵抗して歯医者の指を噛んでやりました。
歯医者はイタタタタとか言いながら手を引っ込めたので、ざまあみろ!って思ったわけです。

そんな事を今でも覚えてるもんですから、子供を診る時は慎重ですよ。噛まれないように。
会話が成り立って、説得できる年齢であれば、よほど急を要する場合以外は諦めて・・・もとい、納得してくれて協力的になるまでは本格的な治療を行わず何度でも来てもらいます。
お母さんにしてみりゃ、とっとと治療終わらして欲しいと思うかもしれませんけど、急ぐあまりに歯医者嫌いにしちゃうと、その子にとって一生の問題にもなりかねませんからね。あと、噛まれたらかなわないし。

でも稀に噛まれる事もあります。もちろん怒りませんよ、僕も噛みましたもん。ざまあみろ!って思われるのは悔しいので、イタタタタとは意地でも言いませんけど。

そして今でも歯医者が嫌いです。

頂き物の菓子が溢れる祖父母宅で育った僕の話はボロボロで、もう、どうしようもない状態だったんでしょうね、僕の歯は。
結局、下の乳臼歯をみんな抜くという事になり、某大学病院の小児歯科に連れてかれました。

ユニットに座らされて周囲を見回すと、シャウカステンのとこに楽しげなバンビちゃんのシールが貼られています。鼻にチョウチョが止まってる、有名なあのポーズですね。
それ見て、「こんなんで騙されると思うなよ」と思ったものです。
普通の子供は騙されるんでしょうか?絶対に口を開けるもんかと思ってる子供がバンビちゃん見て、わーい!楽しいとこじゃん!とかって浮かれちゃうもんなんでしょうか?
ことさら恐ろし気にする必要はないと思いますが、子供騙しな演出で何とかなると考えてるなら、そりゃ子供を見くびってるというものです。だまくらかそうという意図が見えた段階で信用を失うと思いますけど。
僕のヘソが曲がってますか?

そんなこんなで、巨大なトラウマを抱えた僕は、今でも歯医者が苦手です。
あ、正確に言うと、今でも歯科治療を受けるのが苦手です。

とある歯科器材メーカーの出している雑誌に開業したての歯医者を写真や図面付きで紹介するコーナーがあるんですが、「木の温もりを大切に、患者様がリラックスできる医院を目指しました」とかってキャッチフレーズをたまに見掛けます。木の温もりごときで歯科治療のプレッシャーを紛らわせると考えてるあんた、バンビちゃんを見てないね?と思うわけす。

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