歯医者のグローブ

歯医者がグローブをしはじめた理由

現在、ほぼ全ての歯医者がグローブをはめて診療を行っていると思いますが、僕が歯医者になった35年ほど前は、感染症の患者さんの治療をするか手術室で行うような外科処置以外でグローブをはめて診療する歯医者はいませんでした。

歯学部の学生は大学で人体解剖の実習を行います。僕が学生の頃の人体解剖実習は素手で行わなければいけませんでした。グローブを装着して解剖するなんて、ご遺体を不潔なものと考える事に繋がり、冒涜であったからです。
同様に、患者さんの口の中をグローブをして触るなんて事は、患者さんに対して失礼だと思っていました。たぶん、ほぼ全ての歯医者が。

しかし、患者さんが自分の感染を自覚していない可能性がある以上、全ての患者さんを感染者として扱うべきであると、徐々に歯科界の考え方が変わってきました。自覚のない感染者から他の患者さんに歯医者を介してウイルス等をうつさないようにする為には、当然、歯医者が感染しないようにするべきです。
なので、まずは歯医者の身を守るためにグローブをはめて診療すべきであるという方向に歯科界のトレンドは向かいました。

今ではたぶん、患者さん方みんな清潔を保つ為にグローブをしていると思ってるでしょうけど、そもそもは、ちょっと意味合いが違ってたんですね。

歯医者はグローブを着けたがらなかった

例えば根の中の治療を行う時、今では電気抵抗値を測って根の先端を検知するような『根管長測定器』が普及していますので、指先の感覚はあまり重要ではなくなりましたが、グローブが普及する前段階の時代の歯医者は根管長測定器の代わりに指先の感覚を頼りに治療を行っていました。
もちろん、指先の感覚だけではなく、レントゲン写真も参考にしていましたが、根管長測定器が普及しておらず、その信頼性も高くなく、使い方も今より面倒だったので、「指先の感覚が鈍る」という理由で大勢の歯医者がグローブの装着に難色を示していました。

小児歯科でも子供に安心感を与える為に素手でのコミュニケーションを大切にする分野ですので、僕の知っている小児歯科医はほんの十数年前までグローブを装着していませんでした。

ゴーグルも同様

今ではクレー射撃ですか?というようなスポーティーなゴーグルの装着が当たり前ですが、これも歯医者が自衛の為に始めたものです。
観血的な処置を行う時はもちろん、単に歯を削ったり歯石を取ったりする時でも、血液などの体液が目に入って感染する危険がありますので、ゴーグルを着けるようになっています。
僕は今では嫌でも老眼鏡や拡大鏡が必要になりましたが、若い時はグローブ同様、患者さんを不潔視していると受け取られないか心配でした。

今じゃゴーグルもグローブも常識

世間一般では、患者さんを守る目的で清潔を維持する為にグローブを装着していると思っているようなので、安心してグローブで診療ができています。
まさかゴーグルも患者さんを守る為とは思っていないでしょうけど、どこ行ってもゴーグル着用が常識的なので、慣れちゃってるんでしょう。違和感を持たれずに身を守れます。
ゴーグルもしくは眼鏡は飛沫感染防止だけでなく、金属等からも目を守ってくれますので、歯医者にとっては必須です。

グローブ普及で良かった事

グローブをしてても普通に生活しているよりもずっと手を洗う頻度は高いのですが、グローブをしてない時は一人の患者さんを診る間に何度も洗ってましたから、素手を洗う回数が圧倒的に少なくなりました。お陰で手荒れの程度が軽くて済みます。
グローブをしてなかった時は指先がガッサガサで、フリークライマーですか?状態でした。
※フリークライマーの知人(女性)の手が冬の踵並みにガサガサしてました

検診で人数分グローブ交換

保健所で行っている歯科検診では患者さんごとにグローブを交換するよう行政から指導されています。
これは区民の方からグローブを替えて欲しい旨の要望があったからのようですが、正直言いますと、きちんと手洗いさえすればグローブを替えても変えなくても清潔度は同じだと思います。
逆に手を洗わずにグローブだけ交換してる場合は清潔とは言い難いです。グローブ自体は滅菌されていませんから。
夏場はグローブの中に汗をかくので滑りが悪くなり、グローブ交換に手間取ります。そう何度も交換するのは面倒で時間のロスも大きいです。

なんにせよ、検診の現場では手術室レベルの清潔は必要無いので、そんなに神経質にならなくても・・・と思います。

今度はラテックスアレルギー

清潔の概念を理解していないのかと思われる検診現場ですが、今度はアレルギー問題に注目してきました。
一時期、ラテックスアレルギーが世間でことさら神経質に取り上げられた事があり、それを受けた行政は、ラテックスではなくニトリルのグローブを使うようになりました。
ラテックスで一番感作されやすいハイリスクグループはグローブしてる当の歯科医ですので有難いんですけど・・・。

ちなみに、うちはニトリルグローブを使ってます。
ラテックスの方がしなやかで装着感は格段に上なんですけど、抗生剤とアルコールアレルギーの一件で、すっかり自信を無くしちゃったので自衛の為です。

グローブ

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