新型コロナウイルスとマスク
2020年に知られる事になった新型コロナウイルス、現時点で更に広がる傾向を見せています。新型コロナウイルスの事を知ってから何度かブログを更新して、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスとマスクについて記事を掲載してきましたが、いささか散らばり過ぎた為、また、当時書いたおすすめのマスクどころか全てのマスクが現在供給不足になっており状況が変化した為、今迄書いた事を整理してまとめる形で記事にしました。
コロナウイルス感染のしかた(感染経路)
ここでは、インフルエンザウイルスやコロナウイルスの主な感染経路である飛沫感染を中心に考えてみたいと思います。
感染症の感染経路は母子感染と言われる垂直感染と周囲に広がる水平感染に大別されます。飛沫感染とは、この内の水平感染に属する感染経路の一種です。
水平感染は更に以下の4つに分けられます
接触感染
感染者や感染源に直接接触して感染するものを接触感染と呼びます。
とびひ、梅毒、淋病、破傷風などがこれに当たります。
飛沫感染
感染者の咳やくしゃみ等で飛び出した病原体を含む飛沫が鼻腔や口腔に入る事によって感染するものを飛沫感染と呼びます。
インフルエンザ、かぜ、百日咳、麻疹、おたふくかぜなどがこれに当たります。
空気感染
空気中を漂う、飛沫が乾燥した飛沫核と呼ばれる病原体を含む小さな粒子を吸い込む事によって感染するものを空気感染と呼びます。
結核、水痘、麻疹の3つだけです。
媒介物感染
病原体に汚染された水や食品、血液、昆虫などを介して感染する物を媒介物感染と呼びます。
コレラ、赤痢、肝炎、マラリア、ポリオなどがこれに当たります。
飛沫感染の飛沫はどんなもの?
咳、くしゃみ、会話によって飛んだ病原体を含む水滴が飛沫で、直径は0.005ミリ=5マイクロメートル(μm)以上です。
これが一般的には最長1メートル飛ぶとされていますが、2メートル飛ぶ、4メートル、いやもっと、と様々な意見があるようです。僕がテレビで見た実験によれば、えっ!そんなに?と驚くほど飛んでいたと思います。
そして、くしゃみでは1回あたり約4万個の飛沫が飛び、咳では1回あたり約3000個、5分間話すだけでも約3000個が飛ぶとされています。
いずれにせよ「飛ぶ」と分かっている以上、他人に感染させぬよう、また、感染者か非感染者かは他人から見たら区別がつかないわけですので、他人に不快感を与えぬよう、咳やくしゃみをする際のマナーは必要でしょう。WHOでは手で押さえると、その後触った物を介して他人にうつす事になるので、袖や肘の内側で口を覆う事を推奨しています。
非感染者としては感染者に「外出してくれるな」と思いますが、そうはいかない事情もあるでしょうし、何より自分が感染者かどうか知らずに外出しているケースも多々見受けられますので、感染者側であろうが非感染者であろうが予防策としてはマスクがファーストチョイスとなります。非感染者サイドの予防としてはマスクは有効性が低いという説がありますが、飛沫が直接飛び込むのを防ぐマスクが感染予防に有効でないはずが無いと僕は思います。
もちろん、どんなマスクでも良いというものではありません。マスク不足のせいで自分でマスクを作るなどという話がありますが、まあ、気分的には違うのかもしれませんけど、ウイルス感染の予防法としてはいかがなものかと思います。
コロナウイルスの大きさ
前項で飛沫の大きさを記しましたが、そもそもウイルスってどのぐらいのサイズなんでしょうか?
コロナウイルス・インフルエンザウイルス
100ナノメートル(nm)=0.0001ミリ(mm)=0.1マイクロメートル(μm)
飛沫
0.005ミリ=5マイクロメートル
飛沫核
5マイクロメートル以下(一説には0.3マイクロメートル以上)
花粉
0.02~0.05ミリ=20~50マイクロメートル
単位がバラバラで書いてあるので、揃えるのに苦労します。
- 1000分の1m=1mm (ミリ メートル)
- 1000分の1mm=1μm (マイクロ メートル)
- 1000分の1μm=1nm (ナノ メートル)
- 1000分の1nm=1pm (ピコ メートル)
つまりは、5マイクロメートルを濾過できれば“即座に”新型コロナウイルスに感染するのは避けられるという事になります。
マスクの性能
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスから身を守る為には、最低でも5マイクロメートルの飛沫を通さない性能が必須となります。
もちろん、コロナウイルス対策ばかりでなく、花粉対策であったり、お掃除の時の埃対策であったり、それぞれの用途に適した性能というものがありますので、一概に「5マイクロメートルを通すからダメなマスク」とは言えません。要はマスクの問題ではなく、使い方の問題ですので。
マスクの性能は、マスクのパッケージに記されている事が多いです。記されていないものは、その基準に沿っていないと考えるのが妥当です。沿っているならば、その性能をアピールしない筈がありませんので。
ここでは、一般的にパッケージに記載されている事が多いBFE、PFE、VFEにという試験についてご紹介します。
BFE
3マイクロメートルの細菌濾過率を表します。
PFE
0.1マイクロメートルの微粒子濾過率を表します。
VFE
0.1~5.0マイクロメートルの生体ウイルスの濾過率を表します。
その他のマスク性能の規格
マスクの性能を表すのに、いろんな規格があって判断の邪魔・・・いや、迷ってしまいがちです。要は検査機関が違うだけで呼び方が変わってしまったり基準が変わってしまうという事だと思います。揃えてくれると選び易いと思うのですが。
ASTM F2100-11
ASTMは、アメリカ材料試験協会のことで工業用材料全般にわたった規格と試験方法が制定されており、国際的に権威があるので世界中で使われている、日本のJISに相当する機関です。ここで医療現場で使う事を前提に規格化したものがASTM F2100-11です。
ご覧になってお分かりの通り、この規格には呼吸抵抗性の上限が決められています。
呼吸抵抗の数値が低いほど、呼吸が楽にできるという事を表しています。
※ここには書きませんでしたがレベル2とレベル3の違いは血液不浸透性の差です
特性 | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
---|---|---|---|
細菌濾過率(%) | ≧95% | ≧98% | ≧98% |
微粒子濾過率(%) | ≧95% | ≧98% | ≧98% |
呼気抵抗(㎜H2O/㎝2) | <4.0H₂O/㎠ | <5.0H₂O/㎠ | <5.0H₂O/㎠ |
NIOSH
NIOSHは国立労働安全衛生研究所といい、米国保健社会福祉省管轄下の疾病対策予防センターの1組織です。ここでは、巷で良く聞くN95という規格についてご紹介します。
クラス | 捕集効率(%) | テスト粒子 | ||
---|---|---|---|---|
N | Not resistant to oil 耐油性なし |
N95 | 95 | エアロゾル化した塩化ナトリウム |
N99 | 99 | |||
N100 | 99.97 |
Nの他にR(耐油性あり)とかP(防油性あり)とかのクラスがあります。
BEFしか表記してないマスクは2時間で交換すべし
まず、BFEしか表記していないマスクは「内緒にしてたけど実はもっと高性能でPFEだって高確率なんだよ」という事がありえないという前提で話を進めて行きます。
コロナウイルスやインフルエンザウイルスは飛沫感染によって広がります。よって、まず注意すべきは飛沫です。
目の前1メートルぐらいで感染者にハクション!とやられた場合、飛沫の大きさは前述の通りおおよそ5マイクロメーターですから、BFE表示しかないマスクの場合でも防御できます(今はマスクの話をしていますのでマスク以外の個所に付着した飛沫に関しては考えません)。
しかし、飛沫は水分の中にウイルスを含む飛沫核がある状態です。水分が蒸発すると相手は飛沫核のサイズになりますので、5マイクロメーター以下、0.3マイクロメーター以上となりますので、BFE表示しかないマスクでは防ぎきれなくなります。
マスクに付着した飛沫は約2時間で乾燥して飛沫核になると言われていますので、BFE表示しかないマスクの使用は2時間以内に限定すべきという事になります。逆に言うと、BFE表示のマスクでも2時間なら安全であるという事です。
PFEやVFEが表記してあるマスクは時間制限なし
あくまでもPFEやVFEが高確率の表記に限ります。PFE10%とかっていう恐ろしい性能の場合、書くはずがありませんので、ドヤ顔で書いてあるものについては数字を詳しく見なくても問題ないと思います。但し、表記が信用できればの話。
前述のようにPFEやVFEで測定しているのは飛沫核どころではなくウイルス本体すら濾過する能力ですので、時間が経って飛沫が乾いてしましまっても大丈夫という事になります。
時間制限が無いなら、何日使ってもOKって事なのかと思いますよね?基本的にはOKだと思います。マスクの内面が汚染されなければ、いくら表側にウイルスがウジャウジャしてても大丈夫。
ただ、内面は温度も湿度も良い塩梅ですので、病原性の有無にかかわらず微生物は繁殖しやすいんじゃないかとは思います。なので、清潔な状態を保つならばそのまま使い続けるのはお勧めしません。
マスク表面のウイルスが生きてる時間
コロナウイルスは知りませんけど、インフルエンザウイルスは凹凸面で8~12時間、平滑面で24~48時間感染力を保つらしいです。感染力と生死が同じとは言いませんけど、ここで問題になるのは感染するか否かですので、同じ意味とします。
という事は、マスク表面は凹凸面ですので、付着したウイルスは最長で12時間しか生きられないという事になります。つまり、BFEしか表示してないマスクで飛沫を浴びたとしても、2時間以内にマスクを外して、そこから12時間寝かしておけば飛沫が乾いてもウイルスは死んでるわけで、またそのマスクを使っても問題無くなるという事です。
もちろん、マスクを置いておくのは清潔な乾いた場所でなければいけません。
※上記はインフルエンザウイルスの場合です。コロナウイルスについては更に長時間感染力が持続するという研究結果があるようです。
マスクの消毒
エンベロープウイルスであるコロナウイルスやインフルエンザウイルスはエタノール消毒と次亜塩素酸ナトリウム消毒が有効です。
エタノール消毒について詳しくはは下の記事をご参照下さい。

使いやすいのは消毒用エタノールです。百均で買った小さめのスプレーボトルに入れて、手指にシュッとして使えます。
一般的な不織布で作られたマスクは使い捨てを前提としていますが、このマスク不足の状況で一日何枚も消費するわけにもいきません。何枚かのマスクを消毒しながら少しの間だけなら使い回しも可能でしょう。
マスクにシュッ!と吹きかけて消毒すれば清潔を保てます。但し、15秒間作用させないといけないらしいので、適度なビショビショ感で消毒して下さい。
ビショビショの状態で装着すると酔っ払っちゃいますので、乾くまで清潔で乾燥している場所で保管すると良いでしょう。
その肝心な消毒用エタノールもドラッグストアの棚から消えてしまっています。マスクを買いそびれた方は消毒用エタノールだって買いそびれたに決まっていますよね?そういう場合は亜塩素酸ナトリウムを使う以外ありません。
次亜塩素酸ナトリウムをスプレーボトルに入れて使用するのは、本来ならば推奨される事ではありませんけど、マスクを消毒するにはスプレーボトルに入れるしかありません。
刺激性のミストが周囲に飛び散るので次亜塩素酸ナトリウムはスプレーで使ってはいけないという事になっていますので、飛び散らないようにすれば良いわけです。
ここでは、コンビニ等のレジ袋を使う方法をお勧めします。
マスクをレジ袋に入れてシュッ!とすれば、飛び散らずに安全に消毒が可能です。できればこの時、ゴム手袋をしておくと手荒れ予防になります。
次亜塩素酸ナトリウムのスプレーボトルは他と区別が付くようにしておきましょう。僕は赤いビニールテープを巻きました。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は時間が経つと食塩水になり、高温や紫外線で分解が加速します。完全に乾燥して塩素臭が消えてから着用しましょう。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液について詳しくは下の記事をご参照下さい。

※基本的にメーカーはマスクの使い回しを推奨していません。マスクの素材や機能によっては消毒液が影響して品質を保てなくなる場合があるはずですので、自己責任でお願いします。
外したマスクの保管方法
マスクケースに挟む
先日、薬局を覗いたらマスクケースなるものを売っていました。一旦手に取ったものの、有効な使い方が思い付かずまた棚に戻しました。翌日、やっぱりどうしても気になったので同じ薬局に行き、マスクケースを買って来ました。
2つ折りのファイルフォルダーのような形と材質です。右側に未使用のマスク、左側に使用したマスクを入れるらしいのですが、問題はその左側の使用済みマスクです。
廃棄するマスクを左側に入れて家まで持ち運ぶという使い方であれば何の問題もありませんが、左下には「内側抗菌加工」と書いてありますので、廃棄するマスクを抗菌加工した場所に入れる理由が思い付かないので、これは一時保管場所という意味であろうと推測されます。
目的地までマスクして電車に乗って、食事をする為に外したマスクを左のポケットにちょいと挟むとします。マスクの外側に接する面は汚染されますが、マスクの内側に接する面は清潔なまま保管できます。食事が終わって左側のポケットからマスクを取り出して装着するとします。装着したマスクに問題はありません。ちゃんとウイルスの脅威から守ってくれるはずですが、問題はマスクケースの方です。マスクを取り出した瞬間に汚染された面と清潔な面が合わさって、両方共に汚染された面になります。次にマスクを外した時、捨てる目的以外、ここにはマスクを入れるわけにはいきません。この抗菌加工がどれほどのものか分かりませんが、表面に付いたウイルスが死んでてくれてるのかどうか見えませんもの、信用できません。
保管目的は1回こっきりで、後は廃棄目的のみ。一旦家に帰ってアルコール消毒でも行えば再利用が可能だとは思います。めんどくさいですけど。
チャック付きポリ袋に入れる
僕は一箱50枚とかのマスクを買って、新品の持ち運びにはチャック付きポリ袋を利用しています。袋の内面は無菌ではないでしょうけど、病原菌が付いてなけりゃいいんです。ここから取り出して装着したマスクを、一時保管する際に同じポリ袋に戻すという使い方もできます。但し、これも一回こっきり。
でも、これなら消毒して再利用っていう面倒は避けられます。百均で20枚ぐらい入って売ってますもの。捨てればOKです。
封筒に入れる
更に封筒っていう手があります。封筒はペナペナの安物で良ければ、これまた百均で120枚入りが売ってますので、コスパ最強です。
マスクの外側に付いたコロナウイルスやインフルエンザウイルスなどが封筒のペナペナの紙を通して外に出てこないか心配ですが、封筒の中と外で気圧の変化が無ければウイルスはそうそう出てこないと信じましょう。なにせ0.0001ミリの大きさのウイルスにとって、ペナペナの紙を通って外界へ出るのはかなりの旅行である筈です。大体、ウイルスってそんなに自力で移動するもんじゃないでしょ。
実は何に入れてもOKな技があります
この項で一番大事なのは、実はここ。
どんな物に入れて保管しても構いませんが、普通に入れたら一回こっきりです。それを何度でも安全に使える方法があります。
外したマスクの保管は「畳んでポケット」という方が多いと聞きます。きっと、外側を表に二つ折り、こんな感じでしょう。
でも、これだとポケットも手も、何もかもが汚染されてしまいます。清潔なのはマスクの内側だけ。
こんな何もかもが汚染されるような折り方をする人が、いつまでもマスクの内側の清潔を保てる筈がないと思います。
正解は内側を表にして縦に二つ折り。その上で封筒に入れるもチャック付きポリ袋に入れるもマスクケースに入れるも、お好みでどうぞという感じです。こんな風に。
ポケットに直接入れるのはお勧めできません。ポケットの中で開いちゃう危険がありますもの。
僕のお勧めはコスパの面から言っても清潔さから言っても、断然に封筒です。
外したマスクってのは、呼気に含まれる水分の為にいくぶん湿っています。外側にはコロナウイルスやインフルエンザウイルス、内側には口の周辺の皮膚に付いていた細菌や口から出た口腔内細菌が付着している筈なので、湿った環境を保てばウイルスや細菌が増えてしまう恐れがあります。その点、ペナペナな紙の封筒は湿気がこもりませんので保管に最適です。
ちなみに、内側を表にして横に二つ折りしちゃうと、ノーズフィットワイヤーが逆折れで形が付いちゃって、再装着時のフィットに支障が出ますのでご注意下さい。
マスクを外す時、畳む時、封筒に出し入れする時、再装着する時、くれぐれも汚染された手で内側を触らないように気を付けて下さい。再装着する時にはマスクの外側を手で触らずにはフィットさせられませんから、最終的には必ず手が汚染されます。なので、手の清潔を保つ努力をするより不潔な手で内側を触らないよう努力すべきです。

