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舌について
舌の呼び方
舌と書いて一般の人は「した」と読む事が多いと思いますが、われわれ歯医者はいつも真っ先に「ゼツ」と読んでしまいがちです。
もちろん、一般の人が舌を指して「した」と呼ぶ事が多いのは承知していますので、診療時には患者さんに向かって「ゼツ」とは言いません。もっとも、「した」と言うと方向や位置を指す「下」と混同されやすいので「ベロ」と呼ぶ場合が多いです。「したをあげてください」と言った時に「???」となるのを防ぐって事ですね。
余談ですが、日本人はたぶん、「タン」という呼び方は舌を食物として捉える時以外は使わないような気がします。
舌の構造
舌は強力な筋肉で、しかも結構器用だったりします。また、舌の上面は小さな突起で覆われており、ここに味蕾があって味を感じています。
この筋肉と味蕾が後述の役割に深く関わってきます。
舌の役割
舌は感覚器としての役割と運動器としての役割を持っています。
感覚器
- 味蕾によって味を感じます
- 物の硬さや滑らかさ、形、大きさを感じます
運動器
- 発音や構音に関わります
- 食事の際に食べ物を運んだり混ぜたりします
- 食べ物をすり潰します
- その他いろいろ
舌磨きについて
舌磨きの是非
舌を磨くべきか否かについて、科学的根拠に基づいた方針の決定はなされていません。要するに、歯科界で意見統一ができていないという事です。
舌の表面には舌苔という白っぽい苔っぽいものが付きますが、これは自然の防御なんだから落としちゃいかんという意見があったり、口臭の原因になるので掃除すべきだという意見があったりします。
僕は歯医者になる前、歯学部の学生時代から舌磨きを実践しており、かれこれ40年ほど磨いていますが、これによって困った事は経験していませんので、磨いたって構わないんだろと思っています。
僕が舌磨きを始めた切っ掛けは、テレビで見た芸能人が大きな口を開けて笑った時に見えた舌が真っ白でおぞましく感じたからです。
「外見がどんなに綺麗でも舌が真っ白」というのはかなり格好悪い事に思えたので、以来、そうならないように舌を磨いています。
舌の磨き方
「舌の正しい磨き方」なんて特にありませんので、僕がいつもやってる方法をお教えしておきます。
普通の歯ブラシで歯を磨いた時
オーソドックスな形でオーソドックスな硬さの歯ブラシで歯を磨いた後の話です。
口をゆすいで、歯ブラシに付いた歯磨き粉を洗い流した後、同じ歯ブラシで舌を擦ります。
気を付けるのは、以下の2点
- あまり力を入れないことと
- なるべく奥の方から磨くこと
電動歯ブラシで歯を磨いた時
口をゆすいで、歯ブラシに付いた歯磨き粉を洗い流した後、同じ歯ブラシで舌を擦ります。
気を付けるのは、以下の3点
- あまり力を入れないこと
- なるべく奥の方から磨くこと
- 電源を入れずに磨くこと
電源を入れて歯ブラシを動かしながら舌を磨くと、おうぇっ!と嘔吐反射が起きやすくなります。
やわらかい歯ブラシで歯を磨いた時
歯周病の治療や予防の為に、毛先がシュッとしてて柔らかい歯ブラシを使った時の話です。
口をゆすいだ後、舌磨き用として別途用意した普通の歯ブラシか、舌ブラシに持ち替えて舌を擦ります。
気を付けるのは、以下の2点。
- あまり力を入れないことと
- なるべく奥の方から磨くこと
毛先がシュッとしてて柔らかい歯ブラシだと、舌の方面をねろねろと擦るだけでは舌苔を効果的に落とす事ができませんので、舌磨き用に普通の歯ブラシを用意するか舌ブラシを用意しましょう
舌苔を落とすのに特化した舌ブラシは舌を傷つけにくく、嘔吐反射も起きにくいのでおすすめです。もちろん、普通の歯ブラシで歯を磨いている方も、電動歯ブラシで歯を磨いている方も、舌ブラシで舌を磨いても結構です。
僕はこれを一日3回、歯を磨くたびに行います。
3回×365日×40年=43,800回舌を磨いても、味覚が衰える事もなく、舌が痛い事もなく今に至っています。
舌苔を除くことで誤嚥性肺炎のリスクを減らしたり、その他全身疾患との関連性がたまに話に上ったりしますが、僕的にはそんなことよりとにかく「白い舌は格好悪い」と思うので毎日磨いている次第です。